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Ar 単原子イオン・デプスプロファイリング

単原子イオン・デプスプロファイリング

デプスプロファイルの測定設定

単原子イオン・デプスプロファイリングでは、表面下の情報を明らかにするために、イオンビームを使用して表面層 (表面のコンタミネーション) をエッチングします。イオンガンエッチングと XPS 測定を組み合わせることにより、深さ方向の定量的情報が得られます。試料表面からエッチングにより表層物質を取り除く前に、試料の表面からのスペクトルを測定します。イオンビームをスキャン (ラスタースキャン) させることにより、正方形または長方形の領域をイオンビームでエッチングします。エッチングの後、イオンビームを停止させ一連のスペクトルを新たに記録します。目的の深さに達するまで、このエッチングとスペクトル取得のシーケンスを繰り返します。

試料が絶縁物の場合は、イオンエッチングが終了後、スペクトル測定までの間に一定の待機時間を設ける必要があります。これにより、データ収集前に試料表面の電位を定常状態に戻すことができます。

XPS デプスプロファイル測定の手順のまとめ

プロファイル取得時には、データの収集領域をイオンビームのラスター捜査の領域の衷心部分に設定する必要があります。マイクロフォーカス型のモノクロ X 線源の場合には X 線ビームを、視野制限型の光電子アナライザーの場合には光電子収集領域をラスタースキャンの中心に設定します。これによって、分析領域がエッチングクレーター中心の底の平たい部分に設定できます。

実験データは、以下の方法で表示されます。

スパッタ収率

スパッタ収率は、デプスプロファイルで材料が試料から除去される速度で定義されます。

スパッタ収率 = 除去された原子の数/入射イオンの数

スパッタ収率は、材料、イオンのエネルギー、入射角、一次イオンの質量と性質といった因子により決まります。

材料:スパッタ収率は、試料の元素とその化学的状態に左右されます。材料のスパッタ収率を予測するのは困難ですが、使用できるコンピューターシミュレーションが多数あります。一般的に元素のスパッタ収率は、これらのシミュレーションである程度良好に予測できますが、化合物について得られる値は信頼性が低くなります。可能な場合には、通常の実験条件でスパッタ収率を実測することが推奨されます。

直入射角での希ガスイオンによるシリコンのスパッタ収率のイオンエネルギー依存性

イオンエネルギー:各希ガスイオンのシリコンにおけるスパッタ収率をイオンエネルギーの関数としてプロットした場合、スパッタ収率はビームエネルギーの大きな影響を受けることが分かります。

3 種類の金属のスパッタ収率の角度依存性。約 60 度より下では、スパッタ収率が角度とともに増加します。

入射角:スパッタ収率角度は、スパッタリングされる材料によって変わります。角度変化に伴うエッチング率の変化を考える際、ラスター走査される領域内でのあらゆる変化を考慮に入れることが大切です。こういった変化は、試料を傾けることにより生じる場合もあります。

一次イオンの性質:イオンビームの種類が希ガスイオンではない場合、イオンビームと試料表面の間に化学的な相互作用が生じる可能性があります。SIMS でよくあるのは、酸素またはセシウムが一次イオン源として使用され、これが表面とスパッタ率に化学的な変化を起こさせるというものです。たとえば、酸素ビームが直入射角でシリコンの表面に当たると表面が酸化シリコンになり、スパッタ収率がシリコンのスパッタ収率ではなく酸化シリコンのスパッタ収率になってしまいます。

深さの分解能

これは試料の深度プロファイルを取得する場合に考慮すべき 2 番目に重要な点です。以下で深さの分解能に影響する可能性のある重要な因子を挙げます。得られる分解能を調べるうえでのそれぞれの相対的な重要度は、分析対象の試料と使用される実験条件によって変わります。これらの因子は、物理的因子 (スパッタリングプロセスの結果) として分類することもできれば、装置関連の因子 (実験の設計方法や試料の特性の結果) として分類することもできます。

物理的因子

イオンエネルギー:深さの分解能は、生じるイオンエネルギーの増加とともに悪化します。イオンエネギーが増大すると、試料中にイオンが進入する範囲がよりひろがりイオンビームが試料内の原子と混ざることによって、より深い場所で原子のミキシングが発生するようになります。

入射角:イオンビームの入射角が直入射角より大きくなると、深さの分解能が向上します。これは浅い角度でイオンを照射することにより試料内への進入する深さが浅くなり、ミキシングが浅い領域だけで起こることによります。

一次イオンの種類:ある一定のエネルギーであれば、イオンが表面に衝突する面積が大きくなればなるほど、試料内への進入深さ範囲は小さくなり、これによって深さの分解能が向上します。

装置関連の因子

クレーターの質:エッチングで生じるクレーターの底は分析対象の領域全体にわたって可能な限り平らでなければなりません。平らでないと得られる情報が一定範囲の深さから収集され、深さ分解能が悪化します。一般に、イオンビームの直径の 5 ~ 10 倍程度の大きさのクラスターサイズになると、分析に十分な平滑性が保てます。

ビームの不純物:イオンビームに含まれる化学的な不純物は、高純度ガスを使用することによって最小限に留める必要があります。イオンビームに含まれる不純物としては、考慮しなければならないその他の不純物もあります (例:中性種や多価イオン)。ビーム内の中性種は、高エネルギーイオンと中性種との間で起こる電荷交換により生じます。ビーム内の中性種の問題点は、それらが静電レンズやスキャンプレートによって影響を受けないことです。これらの中性種は、制御されない状態で試料をスパッタリングし、クレーターの質を悪化させます。イオンがそれに関連する二価以上の電荷を持つ場合、イオンは単一電荷を持つイオンのエネルギーの 2 倍以上のエネルギーで試料の表面に衝突し、試料内の深い範囲まで影響をおよぼします。

情報深さ:分析プロセスでは、情報収集を行う深さがその分解能に影響を及ぼします。一般的に電子分光の場合は、電子の運動エネルギーが低いほど、その平均の脱出深さが小さくなります。このため、プロファイル内で測定可能なピークに選択肢がある場合は、最も運動エネルギーの低いピークを選んでください。

再堆積:クレーター壁からの材料除去と分析領域内のクレーター内堆積物は、再堆積と呼ばれます。クレーターが小さいほど、この影響が重大になります。

試料の特性

表面の粗さ:荒い表面を持つ試料は、それが全体的な深さ分解能に影響する場合があります。表面の荒さはプロファイル全体を通じて保持されます。

誘発された荒さ:スパッタリング処理によるプロファイル中に、表面に凹凸や荒れが発生し、深さの分解能を悪化させる場合があります。この影響は、プロファイリングサイクルのスパッタリング部分の実行中に試料を回転させることで (面内回転)、ほとんどの部分が克服できます。選択優先スパッタリング:多成分試料では、異なる元素からのスパッタ収率は異なる場合があります。この状態は、試料回転では制御できないような荒さを生じさせます。

電荷:イオンビームや電子ビームは、絶縁試料の表面に溜まった電荷によって偏向します。この影響でクレーターが歪んだり、クレーター内の分析位置が変わったりします。酸化薄膜全体にわたる電荷は、層内の物質の移動を引き起こす場合があります。

プロファイルの最適化

測定者は、分析速度か深さ分解能のいずれかに有利な実験条件を決定しなければなりません。 デプスプロファイルを設定する場合に考慮すべき因子には、以下のものがあります。

一般的な用途


  • 燃料電池
  • 太陽電池
  • 生物付着防止
  • プラズマ処理
  • 金属化コーティング
  • 低摩擦コーティング
  • 耐食コーティング
  • 減摩コーティング
  • 鋼鉄と合金
  • 電気めっき
  • ダイヤモンドライクカーボン
  • レンズコーティングとミラーコーティング
  • 伝導性酸化物
  • 光発色性コーティング
  • エレクトロクロミックコーティング
  • 金属コーティング
  • タッチスクリーン
  • 有機 LED
  • メモリチップ
  • ゲート誘導体
  • 反射防止コーティング
  • フィラメント
  • 放射コーティング
  • 抗菌コーティング
  • アクティブガラス製品
  • 光ファイバ
  • インプラントコーティング
  • 抗菌コーティング
  • コンタクトレンズ