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XPS とは?

表面および薄膜の分析

X 線光電子分光法 (XPS) とは?

光電子の放出

X 線光電子分光法 (XPS) は、材料の表面を分析する方法です。XPS では、材料の元素組成、化学状態、電子の状態などを測定できます。XPS スペクトルは、固体表面に X 線ビームを照射し、材料表層 1 ~ 10 nm から放出された電子の運動エネルギーを測定することにより得られます。光電子スペクトルは、電子の運動エネルギーの一定範囲にわたって放出された電子をカウントすることにより記録されます。スペクトル内のピークは、各原子固有のエネルギー値に由来する光電子ピークのエネルギーと強度により、すべての表面元素 (ただし水素を除く) の同定と定量が可能です。

高機能材料への需要が高まる中、表面エンジニアリグの重要性も高まっています。最新材料にまつわる多くの問題が、材料の表面または材料の層間の接触面で発生する物理的相互作用と化学的相互作用を理解することで解決できます。表面の化学的特性は、腐食速度、触媒活性、接着性、湿潤性、接触電位、不良メカニズムといった因子に影響します。

材料の表面は、外部環境やその他の材料との相互作用が発生する点です。このため、表面の改質は、材料の性能を変えたり向上させたりするための幅広い用途に使用できます。XPS は、破砕、切断などの処理を行った後の材料の表面特性の分析に使用できます。XPS は、テフロン加工から薄膜エレクトロニクス、生体活性表面まで、さまざまな表面材料特性を解析するための標準ツールです。

表面の特性化

表面層は、材料に応じて最大 3 原子層厚 (~1 nm) までとして定義されています。約 10 nm までの層が超薄膜とみなされ、約 1 μm までの層が薄膜です。固体のその他の部分は、バルク材料と呼ばれます。ただし、この用語は決定的なものというわけではなく、層の種類の区別は、材料やその用途に応じて変わります。

 

表面は一つの層と別の層の間の不連続性を表すため、表面の物理特性および科学特性はバルク材料のそれらとは異なります。これらの違いは多くの場合において、材料の一番上の原子層に影響を与えます。バルク材料では、原子は、すべての面がその材料を構成する原子によって規則的に囲まれています。表面の原子は、すべての面が原子によって囲まれているのではないため結合する可能性があり、表面の原子をバルク材料内部の原子と比べて反応性の高い状態にしています。

表面特性

深さ、または厚みの関数としての一般的な特性とプロセスは、特定の特性またはプロセスにとって重要です。表面分析は、以下の分野それぞれの特性の理解に役立ちます。

  • 半導体/マイクロエレクトロニクス
  • 超小型回路
  • 極薄膜
  • はんだ付け
  • 洗浄
  • 薄膜の安定性
  • バリア層
  • 潤滑
  • 化学工業
  • 樹脂/コーティング
  • 触媒
  • ファイバー
  • 金属/鋼鉄業
  • 窒化/炭化
  • 腐食
  • 溶接
  • 疲労
  • 粒界偏析
  • ガラス
  • コーティング
  • モーター/航空電子工学
  • 防食
  • 腐食
  • 酸化
  • 疲労/故障
  • 複合繊維
  • 粘着剤

表面や表面分析が重要な技術分野は、以下のようなものがあります。

光電子放出プロセス

原子または分子が X 線光子を吸収すると、電子が放出されます。電子の運動エネルギー (KE) は、励起 X 線のエネルギー (hν) と結合エネルギー (BE) によって決まります (表面から電子を取り除くのに必要なエネルギーのこと)。

XPS 分析に関わる光子放出プロセスです。黒丸が電子を表し、線は分析対象材料内のエネルギーレベルを表します。このプロセスを表す式は、KE = hν - BE です

放出された電子の運動エネルギーを計測することにより、どの物質が材料の表面近くにあるか、その化学状態、および電子の結合エネルギーを調べることができます。結合エネルギーは、以下のような多数の因子によって決まります。

XPS は、光イオン化断面積は原子の化学環境に依存しない定量技術です。

スペクトロスコピー

さまざまなバリウムピークと酸素ピーク、および炭素ピークを示す酸化バリウムのサーベイスペクトルです

幅広いエネルギー範囲をスキャンして酸化バリウムのサーベイスペクトルを取得しました。このスペクトルからさまざまなバリウムピークと酸素ピーク、ならびに表面の不純物である炭素ピークを検出しました。酸化バリウムのスペクトルは、最新の XPS スペクトロメーターを使用して約 10 秒で収集することが可能です。酸化バリウムは絶縁物なので、試料表面の電荷を制御するために、低エネルギー電子ビームを試料上に照射しました。スペクトルのピークには多くのバックグラウンドがありますが、これは試料表面から放出される前に非弾性散乱した電子により生じたものです。このような散乱は、電子の運動エネルギーを減らし、ピーク強度を減らします。スペクトルの定量を行う前に、バックグラウンドを除去する必要があります。

スピンキャスト PET (ポリエチレンテレフタレート) とシート PET からの XPS スペクトルの C 1s 領域。炭素ははっきりと異なる 3 種類の化学状態で存在します。PET の構造を図内に示します。(イギリス、デアズベリー 、RUSTI の Dr. G. Beamson によるスペクトル。)

また、XPS スペクトルから化学状態を特定することも可能です。2 種類の前処理を施したポリエチレンテレフタレート (PET) からの XPS スペクトルの C 1s 領域を図に示します。二つの検査試料は、前処理の方法が異なっています。片方はスピンキャストで、他方はシート PET です。PET 内の炭素原子は 3 種類の化学状態で存在しており、XPS スペクトルの三つのピークに反映されています。二つの前処理方法を行った結果、ポリマーの構造に差異ができ、スペクトルにも影響して (-O-C-) ピークがわずかにずれています。