分析機能

X 線生成

X 線生成

XPS 装置では、金属アノードに高エネルギー電子を照射させることにより X 線を発生させます。放射される X 線のエネルギーはアノード材料によって決まり、 ビーム強度はアノードに照射する電子の電子流とそのエネルギーによって決まります。

初期の XPS 装置は感度が低かったため、非単色化 X 線源に主に使用していました。その後、感度とモノクロメーター設計が改良され、今ではほとんどの XPS 装置が単色化されたモノクロメーターを標準装備として搭載しており、非単色化線源がオプションになっています。

モノクロ X 線源

クオーツでの X 線の回折




モノクロ X 線源では、X 線が結晶面に平行な水晶に対して角度 θ で入射され、同じ角度で反射します。X 線が水晶内で反射するときに進む距離は、二つの平面間の距離が d の場合、経路長の差は 2dsinθ になります。これが波長の整数と等しい場合、X 線同士が干渉し合います。この影響によりブラッグ式ができます。

nλ = 2dsinθ

ここでは、n = 回折次数、l = X 線の波長、d = 水晶格子間隔、θ = 回折角 (ブラッグ角度) です。

格子間隔などの水晶の物理特性を組み合わせて、Al Kα 線として商用の X 線モノクロメーターに広く用いられています。XPS モノクロメーターとして使用される水晶は、通常湾曲しています。

Thermo Scientific XPS システムで使用されている 集光型の X 線モノクロメーターの概略図

Thermo Scientific XPS システムに合わせられたモノクロメーターの場合、方向ごとに曲率半径が異なり、これによって X 線の集光と単色化が可能になっています。

電子は、LaB6 などの明るい線源から放出され、水冷されたアルミニウムアノードに集光されます。アノードから放出された X 線の一部が水晶で捕捉され、X 線の単色化されたビームの焦点が試料に合わせられます。試料上での X 線スポットのサイズは、アノードでの電子ビームスポットのサイズと同じです。このため、電子ビームのスポットサイズを制御することで分析範囲を制御できます。

単色化線源と非単色線源を用いた場合の Ag 3d スペクトルの比較 (スペクトルは最大ピーク強度に対して正規化されます)

ツインアノード線源で生成される X 線は線幅が広く、サテライトピークも出現し、スペクトルのバックグラウンドが高くなります。これらの因子のすべてが XPS スペクトルの質に影響します。


ツインアノード X 線源

古いタイプの XPS 装置には、非単色化線源であるツインアノード X 線源が搭載されており、2 種類のアノード (通常はアルミニウムとマグネシウム) を使用することができ、個々の分析にもっとも適したアノードを選択することを可能にします。

アノードとフィラメントアセンブリ。

X 線を生成するために、トリアコーティングされたイリジウムフィラメントが使用され、放出された電子がアノード上にて加速されます。電子がアノードに衝突して、X 線の放出が発生します。X 線生成には、アノードでの大量の電力消費が必要です。従って、アノードは水冷されていなければなりません。

X 線源は、X 線が通過できる薄いアルミ窓の覆いで囲まれています。この覆いは、試料領域を線源領域で生成される場から遮蔽するために必要であり、これによってフィラメントからの汚染を防ぎます。

感度を可能な限り高めるために、ツインアノード線源はリニアモーションドライブに取り付けられ、試料の近くに移動させ、表面での X 線の強度を最大化できるようになっています。X 線源は細心の注意を払って設計してあり、アノード 1 が使用中の場合は、アノード 2 によって生成される放射が最低限になっています。Thermo Scientific XPS システムの他のアノードからの X 線放出は全強度の 0.35% 未満です。

標準の X 線源には、アルミニウムアノードとマグネシウムアノードが使用されています。さまざまな X 線エネルギーと線幅を生成するその他の材料も選択可能です。

選択可能なアノード材料のエネルギーと線幅。
アノード 放射 光子エネルギー (eV) 線幅 (eV)
Mg 1253.6 0.7
Al 1486.6 0.85
Zr 2042.4 1.6
Ag 2984.3 2.6
Ti 4510.9 2.0
Cr 5417 2.1